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アメリカ北東部ニューヨーク州を拠点に活動するNPO団体『Hudson Link(ハドソン・リンク)』は、学位取得やライフスキルの提供を通して受刑者や前科者の再犯率を下げ、彼らの新たな旅立ちを支援する目的で1998年に設立された。
スタッフの半分が前科者というハドソン・リンクは設立後21年間、同州にある5つの更生施設やコロンビア大学を含む8つの大学施設からの協力を得ながら、700人以上の受刑者に無償で大卒資格を授与してきた。そして現在は、約600人が同プログラムを受講しているという。
注目されている点が、同プログラムの卒業生の再犯率だ。ニューヨーク州における前科者の再犯率は釈放後3年で43%であるのに対し、ハドソン・リンクの卒業生は僅か2%以下という驚愕の低再犯率を記録しているのだ。
さらに、ニューヨーク州の刑務所で受刑者1人を収容するのに1年で約6万ドル(約640万円)の費用が必要となるが、彼らの1年間の学費は5000ドル(約50万円)で済むという。
ハドソン・リンクは、再犯防止で地域の安全に寄与するとともに税金も節約できるとして、受刑者の教育支援の重要性を強く訴えている。
同団体創設メンバーの1人であり最初の卒業生であるショーン・パイカ(Sean Pica=画像下)氏は今年1月、米メディア『Freethink』のインタビューに応えた。
同メディアによると彼は1998年、まだ16歳の時に知人の父親を殺害した罪で懲役20年の実刑判決を言い渡されたという。
「逮捕されたころ、僕にはもう人生なんて無いんだと思っていた。でも、先輩達が僕を学校に通わせようと背中を押してくれた。今では、刑務所で学んだことが人生で一番意義のある経験となったよ」
受刑者への処罰に重点を置くアメリカの刑務所を疑問視するパイカ氏は、彼らに必要なものは処罰だけではなく「2度目のチャンス」と「更生の機会」だと訴えた。そして、受刑者に学位とチャンスを与えることが地域貢献に繋がると語っている。
同メディアは2019年の卒業式に立ち会い、そこでハドソン・リンクの提携大学であるマーシー・カレッジ(Mercy College)のティム・ホール氏は卒業生の前に立ち、こう激励の言葉を送った。
「もう君たちの前に立ちはだかる壁はない。この学位と共に君たちは新しい境地に進み、学び続けることが出来る。この学位が開くことのできない扉はないのだ」