Source: Suzie Hawkes
20年以上前にオンラインチャットで知り合ってから意気投合し、結婚まで辿り着いたイアン・ホークスさんとシェリル・パルマーさん。
しかし夫であるホークスさんは長年、自身の身体に違和感を抱いていた。彼は、トランスジェンダー(性同一性障害)だったのだ。
現在55歳のイアンさんが幼かった頃は「トランスジェンダー」という言葉は全く世間に浸透しておらず、性転換手術を受けることを思いとどまっていたという。

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結婚前からシェリルさんには性同一障害の悩みを打ち明けていたが、彼女は長い間イアンさんの苦悩を完全に理解することが出来なかった。さらに結婚後は息子が誕生し、夫の性転換による子供への影響も危惧していた。
それ故イアンさんは、ホルモン投与やスキニージーンズの着用など、他人から不審に思われない程度の対処法を自ら行っていたのだ。誰も見ていないところでは、女装もしていたという。
イアンさんはメイクアップアーティストとして働くことで、自分の顔にメイクをしても咎められないような環境に身を置いていた。そんなイアンさんは、本当の自分のことを「SueZie(スージー)」と呼んでいた。

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そんな彼に転機が訪れたのは2014年、ペイズリー病という男性器が反り返る病が襲った時だ。
ペイズリー病を発症した原因は、イアンさんが男性器を頻繁に足の間に挟んでいたためだという。これにイアンさんは遂に痺れを切らし、50歳にして性転換手術を決意したのだ。
不信感を抱いていたシェリルさんだが、夫を苦悩から解放させることを優先。「うん、やってみて」と、彼の決心を支持した。
そして術後、麻酔から目を覚ましたイアンさんが股間にペニスが無いことを確認すると、自然と笑みがこぼれたという。イアンさんは当時の気持ちをこう語っている。
「とても感傷的な気分になったわ。家に帰ってベッドに横になった時、不快な気持ちがすっきり晴れて、やっと自然体でいられるようになったの」
そして驚いたことに、イアンさんとシェリルさんの恋愛関係は性転換前よりも良くなったというのだ。
男性だった過去のイアンさんは「スージーとは別の人」と、シェリルさんは夫の本当の姿を心地よく受け入れた。
そんな中、2人にはある気がかりがあった。それは、スージーが男性の身体に「閉じ込められていた」時の記憶だった。男性の姿をしたスージーとの思い出や写真は「良い気分にはならない」と語る夫婦は、なんとかして過去と決別しようとしていた。
そうして思い付いたことが、ラスベガスで女2人として再婚するという突飛なアイディアだったのだ。

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ラスベガスでの結婚式には親戚や親しい友人らを招き、参加者の中には17歳になる息子のジェイソン君(画像上)もいた。
軍事訓練を受ける予定だというジェイソン君は、父親の性転換手術や両親の再婚に協力的な姿勢を見せているという。
そうして2人は結婚証明書を変更し、正式な女性カップルが誕生したのだ。
「人生がとてもシンプルなものになったわ。シェリルとの関係も改善して、今はすごく幸せなの」
スージーさんとシェリルさんは再婚後、メディアからの取材依頼が殺到。現在は様々なドキュメンタリーに出演し、多くの人々の関心を寄せている。