出典:The New Daily
オーストラリアの植物学者デイビッド・グッドール氏が今月2日、親族に見送られながらスイスへと旅立った。
定年後の楽しい海外旅行・・・ではない。
彼がスイスへと訪れた理由は、安楽死を希望しているからだ。
彼はABCのインタビューにて、こう答えた。
「私はもう104歳だ。なんにしろ私に残された時間は少ない。健康を害してまでずっと生き続けて、不幸な人生を歩んでいきたくないんだ。」
本当はスイスに行きたくはない?
出典:Sophie Moore, epa-efe
パース空港にて、孫にお別れの言葉を継げるグッドール氏。
オーストラリアに残る家族に見送られた後、フランスにいる親戚に会いに行き、スイスへと渡航する予定だ。
長生きしたことを「後悔している」と語ったグッドール氏は、安楽死を支援しているスイスの団体:Life Circle(ライフ・サークル)に安楽死の手続きを依頼。
オーストラリアでも、ヴィクトリア州では2019年に安楽死の合法化が決まっている。しかしこの法律には条件があり、依頼者の余命が6ヶ月以内であるなど末期患者に限られている。
グッドール氏は末期状態の病気を患っていないため、家族を置いてスイスへの長旅を余儀なくされたのだ。
彼はABCのインタビューにて、こう語る。
「本当はスイスには行きたくないんだ。だけど、オーストラリアでは僕の望みは叶えられない。本当に遺憾に思っている。」
生まれ育った地で最期を迎えられないことが、彼の唯一のわだかまりのようだ。
世間の安楽死に対するイメージが覆るか
出典:Vet Times
彼のニュースはオーストラリアのみならず、アメリカや日本など世界中に反響を呼んだ。
グッドール氏はこれを受け、「私の行動で、より多くの人が安楽死について議論をするのは嬉しく思う。私はただ、皆さんに老いの苦しみを理解してほしいんだ。」と話した。
更に彼はこう付け加える。
「何十年か生きたら死ぬのは当然のことだ。悲しくなどない。悲しいのは死を妨害されることだ。私は幸せではない。死にたいと切に願う。」
彼はインタビューの中で度々、「長生きは不幸」との主張を繰り返している。
近年、日本でも注目を浴び始めている「健康寿命」という言葉。これは「心身ともに自立し、健康的に生活できる期間」(公共財団法人 生命保健センター)という意味だが、これは「長生きしても健康でないと意味がない」ことの裏返しともいえるだろう。
健康寿命が叫ばれている昨今、各国が安楽死の合法化を推し進めている中、日本もいずれ国民に選択枠を提供せざるを得ないことになるかもしれない。