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韓国映画『パラサイト 半地下の家族(以下、パラサイト)』が現地時間9日、本年度アカデミー賞の作品賞・監督賞・脚本賞と国際長編映画賞の4冠を受賞した。
外国語映画が作品賞を手にするのは史上初の快挙であり、「歴史が塗り替えられた」と世界中が祝福に沸いている。
一方で、アメリカ国内ではパラサイトのオスカー連続受賞に対して不満を抱いている人々がいるようだ。
アカデミー賞授賞式で同作品が脚本賞を受賞した直後、保守系メディア『BlazeTV』の司会者ジョン・ミラー氏が以下のようなツイートを投稿した。
A man named Bong Joon Ho wins #Oscar for best original screenplay over Once Upon a Time in Hollywood and 1917.
Acceptance speech was: “GREAT HONOR. THANK YOU.”
Then he proceeds to give the rest of his speech in Korean.
These people are the destruction of America.
— Jon Miller (@MillerStream) February 10, 2020
「ポン・ジュノという人が、『1917』や『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』を破って脚本賞を受賞したようだ。彼の英語での受賞スピーチは挨拶程度で終わって、あとは韓国語で何かを言っていた。この人達はアメリカを崩壊させる要因だ」
ミラー氏のこのツイートは、まるで韓国人がアメリカの侵略者であるかのように捉えられ、排他的であり人種差別的であるとして非難の声が殺到した。
その後ミラー氏は、「『この人達』というのは、韓国人ではなくハリウッドの審査員のことだ」と批判を一蹴。しかし、受賞者が韓国語でスピーチをしたことに彼が不満を抱いているのは明白であると、ツイッターユーザーらは弁解に納得がいかない様子だ。
さらにミラー氏は、パラサイトが受賞した理由は「審査員が自分たちは『ウォーク(差別や不公平性に敏感である姿勢)』なんだと誇示させたかったからだ」と主張している。
アメリカの保守層は、こうした主張に同意している人々が多数を占める。アカデミー賞はアメリカ映画のために在るべきであり、国際長編映画賞があるなかで外国映画に作品賞を付与することは認められるべきではないと訴えているのだ。
なかには、パラサイトの作品賞受賞は「アメリカ文化を崩壊させようと目論むリベラル左翼の陰謀だ」などと、あらぬ疑いをかける者もいる。
しかし、保守層の言い分も理解できなくはない。国際長編映画賞は「外国語映画の作品賞」であるのだから、作品賞はアメリカ映画に与えられるべきだ、というのは筋道の通った意見だ。
また当のポン・ジュノ監督は、受賞前のインタビューで「アカデミー賞は地域に特化した映画祭だ」とコメントを残していた。さらに授賞式でのスピーチでも「国際長編映画賞を受賞したから、もうリラックスして帰る準備をしていたよ」と述べており、監督賞や作品賞の受賞に驚きを隠せない様子だった。
一方で、将来的にアカデミー賞がより国際色の強い映画祭に拡大させようとしているのならば、パラサイトの作品賞受賞はその第一歩と言えるだろう。