Source: CGTV/YouTube
2017年末、末期の肺がんと診断されたウォング・ユーさん(トップ画像右)は、幼い息子と妻が自分の死後に悲しむことがないよう、父親が傍にいる気持ちを抱き続けられる環境を作ろうと決意。そのため彼は、生きている間に自分の声をAIアシスタントに録音する方法を考え出したのだ。
香港の英字メディア『South China Morning Post』によると、ウォングさんは化学療法を受ける傍ら、AIアシスタントに声を録音するため、中国西部・新疆ウイグル自治区の自宅から首都北京までの長距離を数回に亘り通っていたという。

Source: CGTV/YouTube
「朝だよ、起きて」「今日は18歳の誕生日だね」「誕生日おめでとう!」
様々なフレーズを録音しAIにウォングさんの声調を学習させることで、残された家族がAIアシスタントを通して彼と多様な会話を交わすことを可能にするという。
生前のウォングさんの姿をドキュメンタリーとして収めた国営メディア『CGTV』が公開した動画には、ウォングさんが自分の声を録音したAIアシスタントを自宅に持ち帰り、息子に使い方を説明している場面が登場する。
「パパが居ない時は、このスピーカーに話しかけるんだよ」
不思議そうな表情で父親を見つめる男の子は、まだ状況をよく理解出来ていないような趣だった。その後、映像は息子の誕生日会に切り替わる。ケーキを囲い幸せそうな家族団欒の光景が映し出され、そこには笑顔のウォングさんの姿があった。しかし、息子が居なくなった後は表情を一変させ、「逝きたくない。家族を置き去りにしたくない」と涙を堪えながら訴えていた。
ウォングさんの妻は夫の意思を受け継ぎ、息子へのメッセージをこう綴っている。
「我が子へ、お父さんの声を忘れないで。まるで、お父さんがまだここに居るかのように」
家族を誰よりも愛したウォングさんは、2018年12月に永眠した-。
CGTVが製作したドキュメンタリー映像は、公式YouTubeチャンネルで閲覧できる。