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【映画】大ヒット作『グリーンブック』は何故白い目で見られるのか

Source: Green Book

本年度アカデミー賞作品賞を受賞したことで脚光を浴びている映画『グリーンブック(Green Book)』は、博士号を持つ天才黒人ピアニストのドン・シャーリー(Don Shirley)氏と、粗野な性格をしたイタリア系の運転手トニー・リップ・バレロンガ(Tony “Lip” Vallelonga)氏が人種や階級の壁を越えて友情を育むという実話に基づいたヒューマンドラマだ。

本国アメリカのみならず日本でも大人気を博している本作品だが、ストーリー展開がいわゆる「白人の救世主(White Savior)」ものであるとの批判が続出しているのだ。

「白人の救世主」とは、白人の登場人物(主に主役級)が非白人の人々を窮地から救う映画やドラマに対する比喩表現だ。グリーンブック以外では、『リンカーン(2012年)』や『それでも夜は明ける(2013年)』、『ドリーム(2016年)』や『ラスト・サムライ(2003年)』など数々のハリウッド映画が列挙されている。

社会学者のキャスリーン・フィッツジェラルド氏は著書『Recognizing Race and Ethnicity: Power, Privilege and Inequality(人種と民族の認識:権力、特権と不平等)』にて、「白人救世主ものは成功している映画ジャンルである一方、このイメージは、非白人の人々を彼ら自身の問題を解決できない無能力者」であると含意していると指摘。

アメリカにおける人種差別の歴史の中で実際に活躍した有色人種の活動家や著名人ではなく、ハリウッドでは白人の登場人物に焦点を当て、更にアパルトヘイト(人種分離政策)の加害者である白人目線で人種差別を語るストーリーに対して、多くの人が不快感を顕わにしているのだ。

Source: Hidden Figures

2016年に公開された1960年代アメリカが舞台の伝記映画『ドリーム(原題:Hidden Figures)』では、NASAの計算手である黒人女性キャサリン・ゴーブル・ジョンソン氏が、有色人種用トイレへ行く度に長い時間席を外さなければいけないという事実を知った白人の上司アル・ハリソンが「白人用」と書かれた看板をハンマーで壊し、有色人種の従業員にこれからはここ(白人用トイレ)を使うよう説得するシーンがある。しかし、この白人上司のアル・ハリソンは映画でしか登場しない架空の人物なのだ。

ハリウッドは架空の人物を作らなければならないほど「白人の救世主」に活躍させたいのかと、当時では批判が巻き起こった。

特に『グリーンブック』では、黒人に対する偏見を持っていた無教養の白人男性(トニー・リップ・バレロンガ)を主人公として設定し、過酷な黒人差別が萬栄していた時代に才能と努力で社会に認められるよう尽力したドン・シャーリー博士に説教するようなシーンが盛り込まれている。

「黒人はジャズやソウル・ミュージックを聴く」「黒人はフライドチキンが好き」という偏見を押し付けるトニー・リップに対して博士が注意するも、トニー・リップは「俺はイタリア人が全員ピザ好きだと言われても気にしない」と反発。果ては「俺は黒人ミュージシャンをよく知ってる。俺の方があんたよりも黒人らしいぜ」と豪語した。

そして、博士が自力で得た地位への道のりや功績の描写は最小限に留め、映画でのスポットライトは、”無力な黒人”を窮地から救う白人の運転手トニー・リップに当てられているのだ。

そうした不満が渦巻く中、黒人の主人公が黒人目線で人種差別に立ち向かう伝記映画『ブラック・クランズマン(原題:BlacKkKlansman)』が昨年全米で公開された。ロン・ストールワース(Ron Stallworth)という実在したアフリカ系の警察官が、過激な白人至上主義団体『KKK(クー・クラックス・クラン)』への潜入捜査に挑むストーリーだ。アフリカ系アメリカ人の監督スパイク・リー(Spike Lee)氏によって製作されたこの映画は、「白人の救世主」の存在しない、有色人種が差別に立ち向かう実話に敬意を表している作品と言える。

視聴者や映画評論家からも高い評価を得た同作品だが、アカデミー賞作品賞は「白人の救世主」ものとして批判されていたグリーンブックが受賞。これに憤慨したスパイク・リー監督は怒りを顕わにして会場を去ろうとしたと報道されている。

 

 

 
 
 
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#Repost from @goldenglobes: Green Book (@greenbookmovie) – Best Motion Picture – Musical or Comedy. Photo by Paola Kudacki (@paolakudacki).

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しかし、こうした世間からの批判に、グリーンブックの監督であるピーター・ファレリー(Peter Farrelly)氏はこう反論している。「白人の救世主ものだという批判が出ることは想定していた。だから映画を製作する上で、マハーシャラ(ドン・シャーリー役)とヴィゴ(トニー・リップ役)はもちろん、オクタヴィア・スペンサーやクワーミ・パーカーなどアフリカ系の業界人にも話し合いに参加させてもらったんだ。白人目線の映画に仕上がることは避けたかったし、結果的に避けられたと思う。この映画は、両極端な2人の男がお互いに共通点を見出して、お互いを助け合う(救い合う)物語だ。」「ただ、人種に関する議論が湧き起こるのは良いことだと思う。それぞれの見解があることも分かる。でも、僕が映画を製作した目的は人々を団結させることだ。それだけさ。」

グリーンブックはハリウッド映画お馴染みの白人救世主ものであると批判する者もいれば、全く性格の違う2人が苦悩を共にして友情を育むシンプルに良い映画だと称賛する者もいる。筆者もグリーンブックは素晴らしいヒューマンドラマだと思う。

しかし、アメリカに実際に存在したアパルトヘイト(人種分離政策)の実態を過少に描写し、実在の人物かも分からない白人の登場人物を過剰に持ち上げて「有色人種のヒーロー」として描くハリウッド映画は、世間からの反感を買っても致し方ないと言わざるを得ない。

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